Marketing / Organization
中小企業はマーケティング責任者を採用するべきか、外部に任せるべきか
マーケティングを強化したい。 ただ、 専任責任者を採用するべきか、 外部に任せるべきか分からない。 この判断では、 単純な費用比較だけではなく、 今の会社にどの責任者機能が不足しているのかを 先に整理する必要があります。
著者:堺 巧光/ TAVIA代表
Conclusion
「採用か外部か」から考えず、 まず必要なマーケティング責任者機能を決める
社内採用にも外部責任者にも、 それぞれメリットと制約があります。 正社員採用が常に正解でも、 外部へ任せることが常に効率的でもありません。 必要な稼働量、 立ち上がり速度、 社内理解、 権限、 専門性、 将来の組織像を整理したうえで、 自社に合う責任者体制を選ぶことが重要です。
Marketing Officeを見るResponsibility
そもそも、マーケティング責任者は何に責任を持つのか
採用か外部かを比較する前に、 マーケティング責任者へ 何を任せるのかを明確にします。
よくある誤解は、 SNS投稿、 広告運用、 Web更新などの 実行作業をする人を そのままマーケティング責任者と考えることです。
実行担当者と責任者では、 求められる役割が異なります。
01
対象顧客を定義する
どの企業、業種、規模、課題、決裁者を優先して獲得するのかを明確にします。
02
優先順位を決める
Web、SEO、SNS、広告、営業など、利用可能な施策の中から今やることとやらないことを判断します。
03
KPIを設計する
アクセス数だけでなく、問い合わせ、商談、提案、契約までつながる数字を管理します。
04
施策と担当者を管理する
社内担当者や外部パートナーに役割を割り振り、施策同士が分断しないように管理します。
05
営業と接続する
問い合わせ後の商談結果や失注理由を確認し、マーケティングへフィードバックします。
06
改善判断をする
数字を見ながら、継続、改善、停止、新規投資の判断を行います。
この役割が整理されていなければ、 採用しても何を任せるのか曖昧になり、 外部へ依頼しても 期待値がずれる可能性があります。
責任者不在で起きやすい問題については、マーケティング責任者がいない中小企業で起きる7つの問題でも詳しく解説しています。
Internal Hiring
社内でマーケティング責任者を採用する方法が向いている会社
長期的にマーケティング組織を社内へ作りたい会社では、 正社員採用が有力な選択肢になります。
社内採用が向きやすい状態
- マーケティング業務が継続的に多く発生している
- フルタイムで任せる仕事量が明確にある
- 事業や顧客について深い社内理解が重要である
- 将来的にマーケティング組織を内製化したい
- 複数の社内部門との調整が日常的に必要である
- 採用・育成に時間と経営資源を使える
社内採用の大きな利点は、 日常的に社内情報へ触れられることです。
顧客、 営業、 商品、 組織、 経営判断などの情報を継続的に得やすく、 長期的には社内へ知見を蓄積できます。
一方で、 採用すれば自動的に マーケティング体制が整うわけではありません。
会社側が 何を任せるのか、 どこまで権限を持たせるのか、 どの数字に責任を持たせるのかを 明確にする必要があります。
External Responsibility
外部マーケティング責任者が向いている会社
外部責任者は、 社内採用とは異なる場面で有効です。
外部責任者を検討しやすい状態
- 今すぐマーケティング責任者機能が必要である
- 責任者をフルタイムで採用するほど業務量がない
- 施策は複数あるが全体を見る人がいない
- 経営者がマーケティング判断まで抱えている
- 採用する前にマーケティング体制を整理したい
- 社内担当者はいるが戦略・優先順位を決める人がいない
外部責任者の特徴は、 必要な責任者機能を フルタイム採用以外の形で持てることです。
特に、 Web制作会社、 広告代理店、 SNS運用会社など 実行パートナーはいるものの、 「何を優先するのか」 「どこへ予算を使うのか」 を決める人がいない会社では 選択肢になります。
ただし、 外部の人間が 社内事情をすべて理解しているわけではありません。
経営者や営業担当者から 顧客情報、 商談情報、 数字、 事業方針を共有してもらう必要があります。
Comparison
社内採用と外部責任者を比較するとどう違うか
どちらが優れているかではなく、 会社の状況に対して どちらが適合するかを見ます。
| 比較項目 | 社内採用 | 外部責任者 |
|---|---|---|
| 立ち上がり | 採用活動・入社まで時間が必要 | 契約後比較的早く開始しやすい |
| 社内理解 | 日常的に情報を得やすい | 意図的な情報共有が必要 |
| 稼働量 | 原則としてフルタイム中心 | 必要範囲に合わせやすい |
| 社内調整 | 日常的な調整をしやすい | 会議・共有設計が必要 |
| 客観性 | 社内事情を深く理解できる一方、既存前提に影響される場合がある | 外部視点で優先順位を見直しやすい |
| ノウハウ蓄積 | 社内へ直接蓄積しやすい | 意識して社内へ移管する設計が必要 |
| 長期組織化 | 内製組織の中核にしやすい | 内製化までの移行期間としても利用できる |
特に注意したいのは、 費用だけを比較しないことです。
例えば社内採用の方が 長期的に適していても、 必要な役割やKPIが決まっていない状態で採用すると、 入社後に 「何を任せればいいか分からない」 という問題が起きます。
一方、 外部責任者を使っても、 情報共有や意思決定を完全に外部へ投げれば 十分に機能しません。
Mistake 01
「マーケティング担当者の採用」と「マーケティング責任者の採用」を混同する
求人を出すときに、 SNS投稿、 広告運用、 Web更新、 デザイン、 SEO、 分析、 戦略、 営業連携まで 一人へまとめて求めるケースがあります。
しかし、 これらは異なる専門性を含みます。
さらに、 「実行できること」と 「何をやるべきか判断できること」 も別です。
必要なのが 制作・運用担当者なのか、 マーケティング責任者なのかを 先に分ける必要があります。
Mistake 02
外部責任者へマーケティングを丸投げする
外部責任者を利用する場合でも、 経営者がマーケティングについて 一切考えなくてよくなるわけではありません。
マーケティングは、 商品、 価格、 営業、 事業目標とつながっています。
そのため、 経営判断が必要な部分まで 完全に外部へ委ねるのではなく、 外部責任者が 判断材料を整理し、 経営者と意思決定できる状態を作ることが重要です。
Mistake 03
広告会社・SEO会社・SNS運用会社に、全体の優先順位まで任せる
各専門会社は、 自社の担当領域を改善する専門家です。
広告会社であれば広告、 SEO会社であれば検索流入、 SNS運用会社であればSNSを 改善することが主な役割になります。
しかし経営側では、 そもそも今広告へ投資すべきなのか、 SEOを優先すべきなのか、 営業改善が先なのかを 判断しなければなりません。
施策を増やすほど、 個別施策の専門家とは別に、 全体を見て優先順位を決める役割が必要になります。
この考え方については、マーケティング施策を増やす前に「やらないこと」を決めるべき理由でも解説しています。
Decision
採用か外部かを決める前に確認したい7つの質問
最終的には、 次の質問を一つずつ確認すると 判断しやすくなります。
- 01マーケティング責任者に週5日のフルタイム稼働が必要か
- 02社内にマーケティングを管理できる人材がいるか
- 03採用後に任せる仕事内容を明確に説明できるか
- 04現在の顧客獲得プロセスとKPIが整理されているか
- 05すぐに責任者機能が必要か、それとも採用を待てるか
- 06実行担当者ではなく、優先順位を決める人が不足しているのか
- 07将来的にマーケティング組織を社内へ残したいか
例えば、 「マーケティングを何とかしたい」 という状態だけで採用を始めるより、 まず現状を診断し、 必要な役割を明確にしてから 採用要件を作る方が合理的です。
同様に、 「採用できないから外部」 と考えるだけでも不十分です。
外部へ任せる場合も、 どこまで責任を持ってもらい、 何を社内で持つのかを決める必要があります。
Hybrid Model
「まず外部、その後採用」という組み合わせもある
採用と外部責任者は 完全な二者択一ではありません。
例えば、 まだマーケティング組織がない会社では、 次の順番も考えられます。
- STEP 1
- 外部責任者で現状、戦略、KPI、運用体制を整理する
- STEP 2
- 社内担当者と一緒に施策を運用する
- STEP 3
- 必要な職種と役割が明確になった段階で採用する
- STEP 4
- 社内責任者へ判断基準やノウハウを移管する
この方法であれば、 何を任せるか分からない状態で いきなり採用するリスクを減らせます。
最終的に内製化したい会社でも、 外部責任者を 組織づくりまでの移行手段として 利用することができます。
FAQ
よくある質問
- マーケティング責任者は必ず正社員で採用するべきですか?
- 必ずしも正社員である必要はありません。重要なのは、マーケティングの優先順位、KPI、営業との接続、施策管理、改善判断に責任を持つ機能があることです。事業フェーズ、予算、社内人材、必要な稼働量によって、採用、既存社員の登用、外部責任者などの選択肢を比較します。
- 外部のマーケティング責任者でも社内理解はできますか?
- 外部である以上、社内にいる人と同じ情報量を最初から持つことはできません。そのため、経営者や営業担当者へのヒアリング、商談情報、顧客データ、既存施策、数値などを共有し、事業理解を深めるプロセスが必要です。外部責任者を利用する場合も、情報を閉じたまま任せるのではなく、社内との連携体制が重要です。
- マーケティング責任者を採用する前に外部へ任せる方法はありますか?
- あります。事業の成長段階によっては、まず外部責任者で戦略、KPI、運用体制、判断基準を整え、その後必要に応じて社内採用や内製化へ移行する方法も考えられます。外部に依存し続けるのではなく、判断基準やノウハウを社内へ残す設計が重要です。
- 広告運用会社やSNS運用会社がいれば、マーケティング責任者は不要ですか?
- 必ずしも同じ役割ではありません。各施策の運用担当者は、その施策を改善する専門家です。一方、マーケティング責任者には、広告、Web、SEO、SNS、営業などの中から何を優先するか、予算をどう配分するか、どのKPIを見るかを判断する役割があります。複数の施策を行うほど、全体を見る責任者機能が重要になります。
- TAVIAでは外部マーケティング責任者として支援していますか?
- はい。Marketing Officeでは、マーケティング領域に特化した外部責任者として、戦略、優先順位、KPI、施策管理、営業との接続、改善判断などを継続的に支援します。無料相談では現在の状況とTAVIAがお力になれる領域を確認し、詳細な診断や改善設計はMarketing Auditまたはご契約後の支援として行います。
